Memoryes ---自然が作り上げた究極のアナログ表現---

それは忘れもしない2001年9月11日午後10時過ぎのこと、米国で展開した同時多発テロにより貿易センタービルにユナイテッド航空175便が激突するテレビ中継を尻目に我が家では、台風の中発生した突風（竜巻）に剥がされ破損した屋根の後処理に苦慮している最中だった。翌日、雨が上がってから被害状況を確認すると、作業室の天袋に保管していた大量の撮影済み35mmポジフイルムが水浸しになって無惨な姿を晒していた。同時に被害に遭った多くの家財道具は処分したが、思い入れのある撮影済みフィルムだけはゴミとして捨て去る決断を下せず、とりあえず段ボール箱にまとめて倉庫の片隅に片付けたまま忘れ去り14年の月日が経過したのだった。ある日、仕事が暇になった機会に倉庫の片付けをしていてその段ボールを発見した。開けてみると水害でダメージを受けた35mmポジフイルムの山が出てきた。もう完全に乾き切っているのでそのまま廃棄するつもりで、念の為ビューアーで被害状況を確認して驚愕した。水で溶けたゼラチンが流れ出し様々なパターンを描きだしていたのだ。墨流しを連想させたが面白いパターンを形成したポジを選別し、空白部分の異なる2枚のポジを重ねてみると、そこには見たこともない不思議な世界が広がっていた。私にとっては甚大な被害と損害を与えた台風だったが、アートとしては大きな収穫を与えてくれた自然現象であったのだ。撮影済みの貴重な自分の記憶にさらに自然が手を加えて唯一無二の記録としてくれたので、自然に感謝しフィルムの粒子まで記録できる高精細画像記録システムで保存、Memoryesシリーズとしてここに公開する。 ---任意の画像をクリックするとその拡大画像が開きます。＜＞で左右の拡大画像に移動します。右上隅のX印をクリックするとこの画面に戻ります---